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モンゴルの風に吹かれて 最終回
オーボーづくり

NPO法人アジアンロード理事長 宮秋道男


昨年の夏、オーボー(注1)づくりを見学できた。オーボーはモンゴル人にとっての鎮守様。 「遠くからお坊さんを呼んでおり、ご神体を入れるので見に行かないか」と誘われ、早速、夏の風参加者たちと一緒に、車で出かけた。 私たちだけかと思ったら、夏休みで帰郷している子どもたちもいれて、その家に集まっている人ほぼ全員が、車2台に分乗して、オーボーづくり見学となった。


「この上だよ」と言われて、車は停まる。確かに、小高い山の上で大勢の方が集まっている。 すぐに下車して、昇ろうとしたら、女性は止められた。 「女人禁制」だそうだ。そう言えば、ほぼ全員が来たと思っていたが、おバァちゃんだけは、知っていたのか、来ていなかった。

上では、お坊さんの祈りが行われている。三十人以上、いやもっとだろうか、大勢がいた。 周辺から集まっているのだという。確かに眺めはいい。 あたり一面、かなり遠方まで眺めることができる。遠くで、羊の群れが、何箇所も見ることができた。


さて、作業のほうだが、赤い箱が持ち込まれ、その中にお金や食べ物、飲み物が入れられた。 そして、それが埋められ、その上に、石が次から次へと積まれていく。

私たちもその石運びを手伝ったのだが、その石、なんと道路の一部。道路の脇にある壁のようにつくられたもので、 それがどんどんとハンマーを使って、壊しながら、運ばれ、積み上げられていくのだった。

「大丈夫なの?」と村長さん(注2)に聞いても、ゼンゼン悪びれもせず、当然のようす。 いろいろ聞いてわかったのは(モンゴル語の通訳は女性なので、そこに来れず、私の中国語で聞く。 専門用語がわからないので、内容で理解できたのは)、


・このオーボーは、数十年ぶりの復活である。

・復活を決めたのは、この周辺にいる責任者たち(いわば氏子代表みたいな人たち。 それは世襲制で、私たちがお世話になっているスチンビルグさん宅のおじいちゃんがその中の一人だった)。

・このオーボーづくりに周辺の村長も数人参加しているが、中国政府(漢族政府)は関わっていない。

というものだった。オーボーが完成して、最後に、祈りをささげるために、お坊さんから、お水(神聖なお水)をもらい、 全員でその周辺を三回まわった。大変、貴重な機会に参加できたものだ。


完成後、緩やかな風を体に感じながら、周辺を指差しながら 「あそこにいる牧民も、あそこにいる牧民も漢族だ。政府の者は漢族だから、 うまくとりいって、いつのまにか、モンゴル人にとって代わって、放牧している」と、 独りごとのように彼らが話したのが印象に残る。


今回で、連載を綴じる。「モンゴルの風に吹かれて」と題して、アジアンロードが、私が、モンゴルにこだわってきた理由が少しは伝わっただろうか。


アジアンロードは、この秋、内モンゴルのフフホトで「介護セミナーinフフホト」を開催するために、準備に入った。

2年前に、中国・上海で実施したが、そのフフホト版を実施しようというものだ。アジアンロードとして、モンゴルとのつきあいは今後も続く。


そんな背景がありながらも、私たちは私たちで出来ることだけを考え、今年も夏に訪れ奨学金を贈る予定だ。一口五千円で、現在、募集中。


●モンゴル奨学金のお申し込みはコチラから

    

E-mail info@asianroad.org

    

Tel/Fax 03-6903-0560

注1: モンゴル各地で、四方を見晴らすことできる小高い山に小石を積み上げて、それは存在する。
方角を示す目印にもなるが、神が宿る神聖な場所だ。
注2: 夏の交流で、現地に滞在すると、そちらの家族の方とともに、いつも近くに住む村長さんも駆けつけ
てくれ、交流の三日間を共にする。