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モンゴルの風に吹かれて⑥
魂の感動

NPO法人アジアンロード理事長 宮秋道男


誤解を避けるために、ふれておくが、アジアンロードは、モンゴルとの交流だけを行っているのではない(注1)。

先日も「アジアの新年会」を雪の降りしきる日に行った。餅つきあり、韓国やベトナム、ネパール、中国、モンゴルの方々と、お国の料理を作りながら交流を楽しんだ。


最近では、語学講座の受講生が先生と一緒に旅に(韓国や中国へ)出ることもある。 先生が結婚するとのことで、故郷での結婚式に参列することも(中国・延辺自治区で北朝鮮と国境を接する延吉に私も昨年三月に行った)。


この十年の活動を経て「等身大の交流を通して、アジアの平和に寄与したい」との「結成の趣旨」に基づき一つずつ実践され、積み上げられてきた感がする。


ところで、モンゴルである。「これっ! この風景が、私の体の中に飛び込んでくる」と、 西田幾太郎ばりに(注2)、その感動を表現した人がいる。 モンゴルの草原に行くと、まるで「魂が震えているような感動」すら、時に起こることがある(注3)。 さらに進んでこんな人もいる。ある時、私たちの主催するイベントで「日本に来たばかり」と、 私はあるモンゴル人を紹介されたことがある。 その時に驚いた。その方は現地の草原で私たちにも乗馬指導をしてくれた若い馬官さんだったのだ。 その彼が気に入った(?)ものだから、「正式な手続き」を経て連れてきたのだった。 日本語もできない彼は、現地でのカッコウよさはどこへ行ったのやら、来たばかりといったことを差し引いても、どことなくショボくれていた。


日本とアジアでの交流は増えてきた。現地の人びとやその生活が紹介されることも多くなった。 その違いに感動し、自らにないものにも気づく。 「遅れている」という認識で、「援助したい」思いがもち上がったり、その魅力から自らのモノにしたい欲望を抑えられなくったりすることも時にある。

その接点の仕方や交流の仕方に、充分注意をしないといけないと考える昨今でもある。

注1: 日常的には語学講座(ハングル、中国語、モンゴル語)を開講し、
毎月一度、料理教室(アジア各地・各国の料理)を開き各種イベントも実施している。
注2: 『天地有情の農学』の中で著者・宇根豊は西田幾太郎を引用し
「風景は風景のほうから百姓に押し寄せ、百姓は風景の中に包まれる」とした。
注3: 「バイオフィリア仮説」をアメリカの学者が唱えている。
遺伝子レベルの問題だが、生物は棲みやすいところを選び、そこに快さを感じるというもので、
ヒトが自然に身を置く時に、そこに快感や癒しを感じることの証でもある。
モンゴルの草原はまさにそのことかもしれない。