日本にも多くのモンゴル人が住んでいることをご存知だろうか。
朝青龍も、白鵬もいるからね。いやいや、朝青龍も白鵬は、モンゴル国のほうだ。
私がいうのは、中国からきているモンゴル人のことだ。その数、4千人とも5千人ともいわれる。 彼らは、自分たちのことを中国人ともモンゴル族(の中国人)とも言わず、モンゴル人という。
そのモンゴル人のかなりの部分が、今年の夏、東京に集まった。 中国の人気歌手であり、モンゴル人の「英雄的な歌手」でもあるテンゲルの初来日コンサートが、東京・池袋で行われたのだ。
アジアンロードも、微力ながら、そのコンサートへの呼びかけを手伝い、チケットを扱った。
当日を迎えて驚いた。千人は入る客席がほぼ満席。しかも、ほとんどがモンゴル人だった。
どうやら日本の各地からモンゴル人が集まったようだ。 夜行バスで九州からも、北海道からも来ていると私の友人がいっていた。 会場受けつけ近くは、さながら同窓会会場のよう。あちこちで話のウズがあった。 そして、いよいよテンゲルが登場し、コンサートは始まった。モンゴル語と中国語(漢語)で話し始める。 中国語のほうが多い。間髪いれずにヤジが飛んだ。「モンゴル語で話せ! モンゴル語で歌え!」と。そこからは中国語は話されずに、モンゴル語でコンサートは続いた。
そして、大いに盛り上がり、最後はクライマックスを迎え、ほとんどの者が立ちあがって、代表的な歌「モンゴル人」が歌われた。
主催者側の打ち上げに誘われたが、それには参加せずに、私たちだけで打ち上げ。
さぞや満足しただろうと思って、あるモンゴル人に聞いたら、そうでもないという。 なぜなら、テンゲルがまず「みんな元気か?」とモンゴル語と日本語で私たちに言ってくれなかったことに、すごく怒っていた。 テンゲルは、日本にいる私たちのこと(=苦労)がわかっていない!と。
モンゴル人は、まじめな人びとが多く、苦労は人一倍しているようだ。 昼は学校に行き、夜はバイトして、それでもお金がなくて、寝るところは公園だというモンゴル人がいるとも聞いた。 もともと遊牧民だから、それができるのだよね、と冗談で話す分ならいいが、それが真実で、本人の立場に思いを寄せるならば、とても笑えない。
日本に来る時すでに、百万円以上の借金をかかえて、成田空港に降り立つ彼ら・彼女たち。 就労目的で来たんだとも非難されるが、まずは借金返済で働かないといけない現実を知らない論だ。
「日本に来て日本の友だちができたか」と留学生に聞いても、多くは「日本人学生とは友だちになれない」という。
絶対的な時間がない(私費留学生の多くが、学校の授業時間以外は、アルバイトに出ている)こともあるが、 流行や遊びだけに関心があり、社会的な出来事には、あまり関心を示さない若者の幼稚さについていけないともいう。
反日デモが数年前に中国であったが、その時に、中国人留学生に聞いたことがある。 彼女の見方は「大陸にいる人は、日本のこと、日本人のことがわかっていない!」と。 フムフムと、続きを聞くと、「日本人が全員コイズミさんのように思っているけど、 こっちの日本人、学生はそんな難しいことなんて考えてなんかいないよ」と切り捨てたのである。これには愕然としたものである。
そんな日本での彼ら、彼女たちの姿と、草原での彼らとかの徐たちの姿がどのように結びつくのか、疑問が膨らんでくる。