私たちが毎年組織する「夏の風 交流プログラム」の活動内容の一つに、奨学金の贈呈がある(注1)。
相手は、サイハンダラという草原の中の街にある小学校に通う小学生たち。 そこは、フフホトとシリンホトの中間地にあり(注2)、そこへの交通機関は車しかない。 日本的感覚からいっても、現地の方からいっても、かなり不便なところだ。
この地の小学校の子どもたちに奨学金を贈りつづけて、昨年で七年になる。 SARSという伝染病が中国国内で流行り、私たちが行けなかった時も、中国・フフホトにいた方に託して贈呈した。
奨学金は、現地の子どもたちにとって一年間の教育費に相当するとはいえ、前々回でもふれたとおり、ほんのささやかな金額だ。 日本国内で集めて、それを20人の子どもたちに直接渡している。
贈るようになって三年目の年、現地に行ったら、学校が大きくなっていた。 前年まで200名程度だった学校が、その数倍の規模になっていたのだ。 理由を聞いたら、学校の統廃合があったとのこと。この話を聞いて、複雑な気持ちになった。 というのも、そもそも小学生のかなりの部分が寄宿舎生活を送っている。 草原の民である彼らの子どもが学校へ通うにも離れていて、数時間、あるいはそれ以上かかるのが普通なので、 学校には寮が用意されて、子どもたちはそこで生活しながら、勉強をしている(注3)。
つまり、学校の統廃合があり、規模が大きくなったということは、人数が増えたわけではなく 対象とする地域の拡大があったということ、つまり、それだけ広い地域の子どもたちが通うようになったということなのだ。 ただでさえ、教育費が負担できなくて、学校に通わせない親がいるのに、 遠くなって、学校に通えないという子どもが発生していないのだろうかと疑問が生じて、複雑な気持ちになったのだ。
しかし、そんな状態に置かれているのに子どもたちは元気で屈託がない。 いつも彼らから元気をもらいながら私たちは交流する。時には泣かせる時もあるけど(第五回参照)。
想像どおりだった。帰国して日本にいるモンゴル人の嘆きが聞こえてきたのだ。 統廃合で、多くの子どもたちから教育の機会が奪われているとのことだった。 それは、生態移民政策(第三回参照)とあいまって進められ、大幅に減少する教材の数にも歴然と表れている、と。
そんな背景がありながらも、私たちは私たちで出来ることだけを考え、今年も夏に訪れ奨学金を贈る予定だ。
一口五千円で、現在、募集中。
●モンゴル奨学金のお申し込みはコチラから
Tel/Fax 03-6903-0560
注1: | 奨学金を贈るようになったのは、「交流のお礼」とともに、私たち日本人で何ができるのかという、 ことを考えてことだった。 現在、私たちは、小学生に送っているが、スニット基金という東京にある団体は、同じ地域の中学生 に、そして大阪にあるMOPIは、同様に高校生に贈って、一部地域に限定しつつ、 ほんのささやか な「支援」を続けている。 |
注2: | フフホトとシリンホトの間の距離は、約800キロ。 ちなみにフフホトへは北京から飛行機で、1時間少しかかる。 |
注3: | 子どもたちがこのようなので、訪問の時期をいつも迷うところだ。 7月初めに行けば、小学校に子どもはいるが、宿泊する草原には、子どもたちはいない。 七月末に行けば、小学校には子どもたちはいないが、草原にはいる、ということでもある。 |