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モンゴルの風に吹かれて⑤
私たちからのお礼

NPO法人アジアンロード理事長 宮秋道男


アジアンロードが「夏の風」と称して、内モンゴルに出かけた際に、現地の大人たちといろいろな交流をするが (たとえば、飲み比べ? 当然、こちらは完敗する)、子どもたちとの遊びも、楽しみな交流だ。 こちらから持ち込んだボールなど遊び道具を使ったり、何もなかったら、「アッチ向けホイ」も結構面白がってくれる。


ある時、コマまわしにかなり自信のある子どもが一緒に参加したことがある。 日本のコマを持参して、彼らにやらせてみようと、見せたことがある。 「やってみろ!できないだろう?」とかなり本気だった。 あっちの子どもは、もちろん初めてなので、コマの紐の巻き方すらわからない。 一度はダメだったが、二度目はなんとしっかりまわったではないか。 一同、びっくり。コマを披露した子どものほうはがっかりしたものだ(注1)。


ある時は、子どもの挑戦を私が受けたことがあった。 一緒だったB・ボルドーさん(注2)に「真剣にやったほうがいい?」と聞いたら、 「いいんじゃないの」と答えがあったので、かなり真剣にやった。相手は、小学校4年生だったと思う。子ども相手のモンゴル相撲をとった時の話だ。

結果は、私が勝ってしまって(!)相手の子が泣き始めたのだ。大人げなかったなぁと、今でも反省している(注3)。


別段、アジアンロードが、交流(たび)の企画の中で、そのように仕向けているわけではないが、 現地の方としばしの間だけだが、時間を共有していると、時に、 日本での人間関係とか様々な悩みなんかチッポケで、どうでもいいやと、どうやら思うことが多いらしい。多くの方の感想にある。

私は、このような受止め方でいいと思う。日本からずっと離れた場所で、 「ゆたかな」(注4)自然に囲まれて、現地の方とこんなに親しく触れあって、 そして彼らの目の輝きなどを受けていると、そのような思いを助長させるのは当然かもしれないからだ。 彼らからエネルギーをいただいているということでもある。


アジアンロードは、毎年、「夏の風」を組織し、現地で交流を行う。 その際に、現地の小学校を訪れ、牧民の小学生に奨学金を贈りつづけているが、 それは、私たちからの「交流」に対しての、ほんのささやかな「お礼」でもあるのだ。


注1: 後日談だが、コマを披露した子どもはその時の、一番人気者となった。
注2: 当時のモンゴル民族文化基金理事長。
アジアンロードはこの方と知り合ってモンゴルとの交流が深まった。
注3: 宮秋のほうは、大人とモンゴル相撲をやったことがあるが、ゼンゼン相手にしてもらえなかった。
注4: 「ゆたかな」という表現のなかには、「緑ゆたかな」という意味が一般にはあるが、
モンゴルの場合はそうではないことは、これまでの中で触れたことなので、省略する。